

The Theater for Thought -思考する劇場-
意味は「考える劇場」「思考を促す劇場」など。
パンデミックも過ぎ去り、2020年代も中盤から後半へ差し掛かろうとしている現在、演劇や劇場という場所の持つ〈考える〉という機能が損なわれていると感じる。
誤解を恐れずにいうならば、私は演劇が芸術であるという地点からモノを考え、モノを創る人間だ。いち消費者としてはエンターテイメントも結構だが、今の世の中全体の流れから察するに、人間に考えさせるより、人間に考えさせない力が拡大するばかりで、どうにも居心地が悪い。SNS、youtubeやインスタ、TikTokなど、短い言葉やショート動画を無限にスクロールしながら、ドーパミンをドバドバ垂れ流し、肉体や関係が無力化される日々に忙殺される現代において、考えるとは時間と体力に余裕のある人間のある種の贅沢となっているのだろうか。
演劇はハッキリ言って儲からない。しかも観客は上演時間、スマホにも触れず、窮屈な客席に座り、目の前の出来事をただ見つめ、答えのない問いを突きつけられる、なんてこともあるだろう。しかしそのような一見不自由に思える状態こそ、本当の意味で人間に自由を与えることがある。コスパ・タイパを回避して、もう一度劇場に〈考える〉ための時間と空間を取り戻すことも、一つの公共性と言えるのではないだろうか。
不条理が笑わない世界
20世紀の戦争により、人類が信じてきた理性や進歩、信仰は崩れ落ちた。それに成り変わり世界を覆った無意味さ、或いは人間存在に対する違和感を背景に、ヨーロッパを中心に広まった演劇「The Theatre of the Absurd」。これを日本語では不条理演劇と翻訳された。
かつて不条理とは感覚であった。
私はそのことを日本の劇作家・別役実氏の「象」を読むことでいつも強烈に感じるのである。しかし、かつて60~70年代のアングラ演劇がもたらした近代演劇から現代演劇への転換、或いは〈肉体〉や〈集団〉というキーワードは、2026年現在、情報に呑み込まれているように思える。かつて世界全体を巻き込んだ戦争も、21世紀の今まさに世界で起こっている戦争も、政治や経済、ヒューマニズムといったあらかじめ決められた規格の箱に収納されてしまう。
不条理が情報になった世界で演劇はどうあるべきか。
私は今回の創作を通して、一度は世界に対して一定の役割を果たした不条理演劇の新たな、未来的な使い方を探り、そして不条理を情報として処理するのではなく、演劇を使って物と感覚の世界に引っ張り出すことで、〈不条理が笑わない世界〉について実感と共に考えたい。
【詳細】
『象』
作:別役実
演出:石田聖也(そめごころ)
会場:アトリエ間-あわひ-(早良区飯場224-1)
※公共交通機関、駐車場、送迎あり
〈出演〉
福澤康仁(そめごころ)
藤田恵佳(そめごころ)
西山太一(ウンガッツ)
桜井玲奈(フリー)
いしだま(はみだす朗読ユニット テクテクハニカム)
美術・照明:古野裕基(そめごころ)
制作:somegokoro
宣伝美術:田村さえ(灯台とスプーン)
〈日程〉
2026年3月27(金)~29日(日)
・3月27日(金)18:30
・3月28日(土)13:00/18:30
・3月29日(日)13:00/18:30
〈チケット〉
前売り:3,000円(当日現金精算)
学生無料(要学生証提示)
別役実
1937-2020 劇作家・童話作家・評論家
ベケット/アラバール/イヨネスコのようなヨーロッパの作家を中心に広まった「The Theatre of the Absurd」を土台に、日本の「不条理演劇」を確立した第一人者。何気ない会話のズレや笑い、空虚な不安や閉塞感、固有名を持たない登場人物、舞台に登場する一本の電信柱などが特徴。
象
背中の被爆痕(ケロイド)を人目に晒し、再び喝采を浴びることに執着する病人と、それに嫌悪し静かな生活を守り抜こうとする甥の男。原爆が人間にもたらした不条理という感覚を斬新な手法で鮮烈に描き切った別役実初期の代表作。
〈ご予約〉
予約フォーム
https://forms.gle/fPUHHqKixG9pNUt77
〈アクセス〉
○曲渕線乗合タクシー(最寄駅:飯場 ※現金支払い)
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/chiikikotsu/machi/documents/riyougaidoeturann.pdf
○車でお越しの方は駐車場をご利用できます(3~4台駐車可能)
※お寺の駐車場への駐車はご遠慮願います。
〈送迎〉
各回、開演の45分前の集合とさせていただきます。
送迎を希望される方は予約フォームへご入力ください。
(地下鉄七隈線賀茂駅一番出口)
お問い合わせ
somegokoro@gmail.com
主催:アトリエ 間-あわひ- Artist Collective Somegokoro
【Artist Collective somegokoroとは】
2013年に福岡大学演劇部の部員6名で、演劇ユニットそめごころとして旗揚げ。以降、福岡市内のみならず、愛媛、東京、名古屋、香川、長崎など様々な地域で作品を発表。2020年の一年間の活動休止期間を経て、グループ名を「Artist Collective somegokoro」とし、演劇だけではなく展示・インスタレーション、その他様々なアート作品の創作など、幅広く活動するアーティストコレクティブとして活動を再開。2022年12月からは早良区飯場を拠点とし、戸建てを使ったアトリエの創設。アトリエの管理・運営をしながら作品の創作発表、イベントなどの開催などを行う。
活動コンセプトは〈総合芸術の実践〉とし、都市との関係の中で現代を生きるのに必要な共同性・価値観を作り出すことを目指しながら、根源的な問いを持った作品の創作を行う。
【アトリエ 間-あわひ-】
「アトリエ間-あわひ-」は2022年12月に福岡市早良区飯場に創設した、Artist collective somegokoroの管理・運営する芸術家のためのアトリエです。グループの創作活動の中心地としての活用や、演劇の上演や展示、WS、トークなど様々なイベントを行っています。人が住まなくなった一軒家を芸術家のアトリエとして活用・維持することで、地域に新しい風を吹かせることが、私たちのミッションです。2025年にはアトリエの名前を「アトリエ間-あわひ-」とし、somegokoroの拠点というだけではなく、より他の芸術家と観客に開かれた場として運営しています。
